act.XX Next Stage

4/8
前へ
/72ページ
次へ
「……………………ごめん」  何も言えずに、ただ謝れば。  驚いた瞳が、ゆっくりと笑いに変わる。 「何謝ってんの?」 「……なんとなく」  その優しいような瞳を見つめていることも出来ずに俯けば、ふ、と。小さく笑う気配がして 「…………結人」 「ん?」 「……キス」 「は?」 「して?」  思わぬ単語にガバ、と顔を上げれば、真っ赤になった顔でそう呟かれた。 「…………どしたの?」 「したくなった」  イタズラっぽい笑みだと思った。  なんとなく、優しいようにも思えた。  これはたぶん、明なりの労りのようにも思えた。 「………………そっか」  思わず笑ってから、真っ赤な顔した明を、けれどそっと抱き締める。 「……ゆーと?」 「……きっとたぶんさ……」 「うん?」  素直に腕に収まった明の温もりを感じながら続けた。 「……明が見送りに来てたら……。……オレは、たぶん……何も出来なかった。……バイバイも言えなかったと思うし、こうやって、抱き締めることも……格好いいことも言えなかった。……泣けもしなかったと思う。……ただ、立ってることしか、出来なかったと思うよ」 「…………そう」 「うん」  華奢な体を離して、頬に唇を寄せる。 「…………そっか」 「うん」  微笑った明が、同じように頬にキスをくれて。 「……そっかぁ……」  肩に顎を載せた後で、明が耳元でくすくす笑った。
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

285人が本棚に入れています
本棚に追加