act.XX Next Stage

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 *****  寒い寒い朝だった。  制服の下に何枚着込んでも、どうしようもないくらいに寒い日で。  学校指定のウインドブレーカーなんて大して暖かくもないし、マフラーをしたところで寒いものは寒い。  大して変わりもしないのに腕をさすったりなんかして。 「さっむいわー」 「ありえんなー」  そんな声が耳に入ってくる中で、キョロキョロと彼を捜す。  アイツが転校した後、遅刻の回数が増えたと聞いて以来、駅に着いてから彼の姿を探すのが日課になっていた。  こんな寒い朝は、寝起きのイイ人間でも布団から出たくなくなる。  電車が来るまで、後5分くらいか。  今の時点で駅にいなければ、電車には間に合わないし、HRにも間に合わない、なんて思った所で。 「…………明くん?」  ホームの、端。  寒そうなブレザー姿で、彼が立っていた。  マフラーも見あたらない。  地面に置いていた鞄を取り上げて、早足で歩み寄る。 「明くん」  掛けた声に。  振り向いた彼の。  瞳が、曇る。 「……あぁ、朔弥くん……」  落胆を顔に浮かべながらも、いつもと変わらない声がそう紡いで。  あぁ、きっとアイツが呼びに来てくれるのを待っていたんだな、なんて思った。  無意識のうちに、アイツを求めてるんだろうなと、思った。  全て忘れても、ココロの奥底では、アイツを求めてるんだと。 「寒くないの?」 「ん」 「嘘。唇真っ青だよ」  巻いていたマフラー外して、彼の首に巻き付けてやる。 「いいよぉ」  エンリョしながらも、思わず零れたのはホッとしたような溜め息で。 「いーから。してなよ。見た目が寒そうなんだもん。こっちまで寒くなるよ」 「……ありがと」  儚い笑みと一緒に、そう呟いた彼を。  守りたいと、この時に強く思った。  アイツの代わり、なんかじゃなく。ちゃんと、守りたい、と。 「……もうすぐ電車来るよ」  時計を見て嬉しそうに笑う君を、見つめていた。
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