act.XX Next Stage

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 言うなれば、デジャヴ。  新幹線を背にして、君と向かい合うこの瞬間に、思い出したあの冬の朝。  君の隣りに、アイツが戻ってきた時に。  オレの出番はなくなったんだと悟った。  だって、いつも泣き出しそうに不安定だった彼が、今はとても幸せそうな空気を身に纏っているから。  守りたいと思いながら、結局は守りきれなかったんだと思う。  彼が自分に頼ることは、一度もなかったから。 「頑張ってね」  そんな苦い思いを噛んでいれば、彼が。  そっと呟いたセリフに。 「うん、ありがとう」  取り繕って笑えば、彼も笑い返してくれる。 「帰ってくることがあったらさ、また遊ぼ?」  優しいセリフ。 「そうだね。連絡する」 「ん。待ってるね」  にっこりと、笑う彼。  鳴り響く、発車のベル。  彼が、顔を上げた。 「…………明くん」 「何? 朔弥くん」  紡がれた名前。  優しい瞳。 「…………元気でね」  いっそ好きだと言ってしまえばいいものを、どうでもいいセリフしか口に出来ない、自分の意気地のなさを笑う。 「……うん。朔弥くんもね」 「…………じゃあ、ね」 「うん」  乗り込む。  ドアが閉まる。  揺れる手の平。  泣きそうになって、焦る。  言いたいことも言えずに、別れることが、こんなにも悔しいなんて。  涙と一緒に息を飲み込んで、歯を食いしばるけれど。  彼が。 「絶対、また会おーね」  満面の笑みで。  大きく手を振りながらそんなことを言うから。  思わず笑ってから、目尻を涙が伝うのが分かる。 「うん」  大きく、頷くだけで精一杯。  動き出す新幹線。  彼が一瞬驚いた後で。  けれど、変わらない笑みが 「またね」  そう紡いで、遠くなっていく。  見えなくなるまで、手を振っていてくれた彼に。  同じように手を振り返して。 「…………だいすきだったんだ……」  呟けたのは、窓の外が見慣れない風景に変わった後だった。
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