act.XX Next Stage

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 *****  君の腕の中でホッとしながら、目の前にあった耳の端っこを軽く噛んでやる。 「っ!? 何、どしたの?」 「オレねぇ結人」 「何?」  慌てる君を、ぎゅっと抱いて。 「……あの日の結人に、もし今、会えても。……お前はそのままでいいんだよって、言うと思うんだ」 「……明?」 「…………たぶん、それでいいんだって、言うと思う」  肩に額を擦りつけて言えば、 「……どうして?」  そう問いかけられる。  うーん、と小さく呟いてから。傍の温もりに、もっと近付こうと顔を押しつけた。 「分かんないけど、でも……。……あの日、結人とちゃんとバイバイしてたらさ……オレは、待てなかったかもしれない。……結人が、帰ってくるの」 「明……」  驚いたような淋しいような、静かな声を聞きながら、ゆっくり口を開いた。 「待てなかったっていうか……待たなかったっていうか……。……きっとさ、……諦めてたと、思うんだ」  帰ってくるのか来ないのかも分からない人間と、トモダチを続けていくのは簡単でも。  愛、を。  続けて行くには、まだまだ幼すぎたと思うんだ。  始めのうちは、焦がれたかも知れない。狂おしく苦しんで、今すぐにも駆け出したくなったかも知れない。  けれど、3年。  互いに知り得ない時間が、その間、絶えず流れていく──。  バイバイ、と別れてしまえば、想い出に変わり。  愛は愛でも恋でもない、優しい記憶へと変化しただろうから。  今日、朔弥くんに言った「またね」と同じ「またね」は、言えなかっただろうと、思うから。 「……だからもう…………。……自分のこと、責めなくていーよ」 「っ……」  ぽんぽん。と背中を叩いてやれば。  君の体がギクリと揺れたのが分かる。 「……な、んで……」 「知ってる。結人、ずーっと、自分が悪いって、思ってたんでしょ?」 「……」 「でも、全然悪くないよ。……悪くないから。……自分のこと、許してあげなよ」  もう一度、かぷ、と今度は肩を噛んでから。 「ゆーとー」 「うん?」  震えた声で返事をするのに、笑いながら言った。 「今日晩ご飯、焼き肉しよ、焼き肉」 「………………。オレ噛みながら言うのヤメてくれる?」 「いーじゃん。焼き肉」 「はいはい」
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