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「ゆーとー」
「……何?」
ばぃん、と遠慮無くドアを開けて入ってきた明の姿を認めて苦笑。
「遊び行こ」
「は?」
「海!!」
「……はいはい」
唐突な誘いはいつものこと。
そんな風に割り切って苦笑しながら頷けば、にっこりと嬉しげに楽しげに笑った明が、早く早く、と急かす。
「楽しそうだね?」
「楽しいよ? だって……っ」
「? だって?」
「あー…………何でもない」
ふぃっ、と明らかに何かを隠す様子の明を、意地悪くつつく。
「何だよ言えよー。隠し通せると思ってんの?」
「ぅー……」
「……言わないんだ?」
にっこり笑ってから、幼いときと同じように、こちょこちょとくすぐってやる。
「ふはっ……ちょっ……ヤメッ」
「言う?」
「…………ヤダ」
「じゃ、ヤメない」
「ちょっ……ゅぅとっ……ふふっ、……はっ、も……ちょっと!」
「言う?」
「…………」
「言わないんだ?」
「言う言う!!」
だからもうヤメて。と笑い泣きしながら言うのに、尊大に笑ってみせたのに。
「で? 何隠そうとしたの?」
「……ゆーとが……」
「オレが?」
「ちゃんと笑ったから」
「…………ぇ?」
予想もしていなかったその言葉に目を見張った。
「……最近……無理して笑ってるみたいに見えたから……。……でも、さっきは、ちゃんと笑ってた」
「明……」
「……だから、楽しいなって言うか……嬉しいなって言うか……」
もー、照れるから終わり。
そんな風に笑って話を終えるのに、今度こそ嬉しい笑みを浮かべてから、ありがと、と笑った。
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