act.2

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 助け合える。喜び合える。励まし合える。  そんな関係。  これから先も、ずっとそう在れたなら。  それだけで幸せなのに。 『……急な話なんだけど……』  思い出しかけた言葉を、今は置け、と頭の片隅に追いやって。 「ぅはー……気持ちいー……」  ズボンの裾をたくし上げて足だけ海水に浸けながら、満足そうに波と戯れる明を優しく見守る。 「やっぱ海いーな!!」 「そーだな!!」  テンションの高い明に苦笑しながら頷く。  こうしていると忘れられる。  これからの、ことを。  今までだって、そうだった。  嫌なことや辛いこと、哀しいことも明と一緒にいられたら、どうでも良くなった。  大好きで。  心地よくて。  ほんの少しだけ苦いこの関係を。  果たしていつまで続けていられるんだろう。 『……ごめんね。だけどもう、決まったことなの……』 『そん、な……』  無力なオレは、いつまで君といられるだろう。 『……我慢して』 『……』  10年後も、今と同じに笑っていられるかな? 「…………とう、きょう……」 「ん? 何?」 「……ううん、なんでもない……」  誤魔化すように笑ってから、自分もばしゃばしゃと海に入って波を蹴る。 「ぅわっ何すんの!? かかるでしょ!?」  喚く明に、ふふん、と笑えば、同じように笑った明がこちらに向けて水を掛けてくる。 「ちょっ……オレ、軽くやっただけじゃん!」 「自業自得」  笑い合う。  びしょ濡れになっても気にしない。  楽しくて楽しくて。  ──泣きそうだ。  どうしてこんなにも、無力なの? 『2学期からは、東京に行くから』 「ヤダよ」  ずっとずっと明と。  こうしてバカみたいに。  無邪気に戯れていたい。
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