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あれは、いつだったろう。
まだ、ちっこかった時の話だ。小学校に入学する前、幼稚園の年長組の頃。
今はもう在ないお袋に、絵本を読んでもらった記憶がある。
俺は本なんか一ミリたりとも興味なかった。
けど、あの絵本だけは覚えてる。
今でも、鮮明に。…鮮明にってのはちょっと言い過ぎた。でも、覚えてる。
『ある日、空が灰色の雲に覆われて、大きな怪獣が、町に姿を現しました。怪獣は、大きな足で町を踏みつけて、町をどんどん壊していきます。でも健太くんは、ずっと憧れていた怪獣に出会えて、嬉しくて怪獣に話しかけました。
「きみは何処から来たんだい?」
怪獣は健太くんの質問には答えず、笑って言いました。
「まずはお前から食ってやろうか」
健太くんは怪獣と話が出来たことが嬉しくて、また怪獣に質問しました。
「どうしたら、怪獣になれるんだい?」
怪獣は、健太くんを見下ろしてまた笑いました。
「おれに食われればなれるのさ」』
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