【二章】誘惑の瞳

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 表面には文字に似た模様が彫り込まれていた。 杭は四本あった。これを地面に打ち付けてその範囲が結界になる。 「退魔の陣を張るための結界を持ってる冒険者は魔力がある人間がほとんどだ。 魔力を流して結界を張るからな。でも俺の持ってるやつは特別で、魔力がなくても使えるんだ」  ルークはグレイスに杭を一本差し出した。 グレイスはそれを受け取った。 そしてその杭に力がこもっているのを感じた。 「これは聖なる力?」  手に持った瞬間、グレイスは精電気を受けたような感覚を覚えた。魔を退ける聖なる力は闇に属するグレイスの魔力に反発を起こした。  この杭には聖なる力が宿っているようだ。 「そうそう、聖属性な。これは地面に刺したり置いておくだけでも効果があるんだ。 ただ、結界を張れる広さは限界があるけどな」  ルークが言うには四方5、6メートルくらいまでは有効、とのこと。一人で寝場所を確保するには広すぎるくらいだ。  グレイスはそんなものがあるこの世界の文明に少し感心した。 「冒険者は皆こういう物を持ち歩いているのですか?」 「うーん、持ってない方が普通だな。結界を張るには多少魔法が扱えないとダメだし、俺が持ってるのはかなり特別なものだから」  ルークが言うには、魔力が込められた退魔の道具と言うのは他に見ないものらしい。 「この杭はどこで手にいれたのですか?」  そんなに珍しいものをどこで手に入れたのか?グレイスはルークに杭を返しながら訪ねた。
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