【二章】誘惑の瞳

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「俺には師匠がいるんだ。その人は孤児だった俺を拾ってくれて、しかも生きる術や魔法が使えなくても戦う方法を教えてくれた人なんだ。 その師匠が持ってたもんを預かってたんだが、離れ離れになっちまってさ。それ以来会えず終いでお互い生きてるかどうかも分かんねぇ状態なんだ」  ルークの師匠と言う人物が聖なる力を持つ杭を持っていたならその師匠がどういう人物か、少し気になった。 「生きているならお会いしたいですね」 「俺も会いたいよ。んで俺は生きてることを伝えたい」 「師匠と分かれてから何年立つんですか?」 「多分6、7年じゃねぇかな?まだ俺もガキだった頃だよ」  子供の頃に生き別れた師、孤児であったルークを拾ってくれたその人は彼にとってただ大切な人間というにはいい足りないほどだ。 「感謝しているんですね。その師匠という方には」 「当然だろ。師匠が拾ってくれなきゃ俺は今頃この世にいねぇよ」  笑って返すルークだったが、戦争で親を無くした子供が生き残るのは相当大変だ。 ルークの師匠のような人物はかなり稀だ。普通、孤児を拾って生き方まで教えようなどしないだろう。  グレイスはルークの気持ちが少しだけ分かる気がした。 先の見えぬ未来に絶望し、どこにどう進んでよいか分からない。そこに手を差し伸べ、道を示してくれる者が現れた。ルークにとっては師匠と言う存在、グレイスにとっては魔王がその道を示してくれた人物だ。
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