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それだけではないが、一つの理由としとグレイスが魔王を命懸けで守ろうと忠誠を示すのはそういう経緯がある。
グレイスは魔王の元に行くと彼の顔を覗き込んだ。
「グレイスにとってマオはよっぽど大事な奴なんだな」
「ええ、それはもう……」
まるで触れるのさえ躊躇われるような愛しい者を見る眼差しでグレイスは魔王を見つめていた。
ルークには少々、グレイスの気持ちが行き過ぎている感じもした。言わば狂信的な部分があるように見えたのだ。
「グレイス、マオを連れてもう少し奥に行こう。ここじゃ結界を張るにはちょっと狭いしさ」
「分かりました。足下に気をつけて進みましょう」
そう言うとグレイスは魔王を自分に寄りかからせてから背負った。魔王が眠っている間は自分が守るとグレイスは誓った。それは果たさなければならない。
「早く起きてくれりゃあグレイスも楽なんだけどな」
「私は大丈夫です。魔王様はそんなに重くありませんし」
「俺はすげぇ重かった……」
ルークはため息をついた。グレイスは苦い顔をしているルークを見て笑っていた。
三人は夜の闇が覆う雑木林の中を進んでいった。
ルークが小さな明かりを手に持ち、それを僅かな頼りにして先を照らす。だが本当に足下しか見えない。
三人の行く末を表すような先の見えぬ道が続いていた。
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