【三章】さまよう巨影

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「あいつに会ったのか。なるほど……彼なら君も苦戦するかもしれないな」  ハスターはひとりごちて顎に手を当てた。グラーネが鉢合わせるとはハスターも予想していなかったらしい。 「ハスター様が心臓を貫かれても死なないとおっしゃるので私、確かめてみましたわ」 「まさか魔法を心臓で貫いたとか?」 「恐らく心臓は外れてしまったと思いますが、闇の力で作った矢で胸を貫いきましたの。だけどその男は血を流しながら私に向かって来たんですわ」  矢から血を滴らせて自分に近付いてきた魔王に、グラーネは少なからず戦慄を覚えた。  グラーネは首にしている金色のチョーカーを触った。 「どうやら私のこのチョーカーが欲しかったようですの」 「君のチョーカーを?まさか、そのチョーカーが闇の力を与えているものだって話をしたのか?」  ハスターは訝しげにグラーネに聞いたが彼女はかぶりを振って否定した。 魔王がグラーネのチョーカーを見た瞬間、それが闇の力を持つことを見抜いた話をした。  話を聞いたハスターはにわかに信じられずにいた。 「驚いたな。見ただけで闇の力があるかどうか分かるなんて熟練した魔導士にだってそうは出来ることじゃないだろ?」 「熟練した魔導士でも見ただけでは見抜けないと思いますわ。あの男、もしかすると魔力を感じる能力は長けているのかもしれません」  ハスターの持つ剣を見るや自分のだと言い出したことも二人には引っかかる部分だった。 そんなことを言ってきたのは後にも先にも魔王だけだったからだ。
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