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今、ある世界の命運をかけた戦いが始まろうとしていた。
口元に笑みを浮かべ、やってきた謁見者を出迎えた。
彼が玉座からゆっくりと腰を上げたると、沸き立つ禍々しいオーラは周囲の空気を歪めていた。
王は眼下にいる傷だらけの使い魔を一瞥した。
膝をついて肩で息をする使い魔は傷ついた体を支えながら弱々しく主を見上げていた。
その目は疑問を投げかけていたが、主はそれを無視して使い魔の横を通り過ぎた。
王の目の前には使い魔の命より大事なことが待っていた。
「ようやく、ここまでたどり着いたか」
「残るはお前だけだ、魔王!」
首を覆う位の長さを持つ黒い髪に、全てを凍てつかせるような冷たい色をした蒼い瞳。
漆黒の鎧に身を包み、肩から闇を覆ったかの如きマントをなびかせていた。
魔王と呼ばれた全身黒尽くめの男は、目の前にいる白く光に満ちた鎧を身にまとった青年を見て不敵に笑った。
金髪で逆立った短い髪をした青年は、白銀の鎧と額宛てをしていた。
手に持った剣は光を形にしたかのごとく眩い輝きを放つ美しく神々しい剣だった。
「我が前に辿り着いたことは賛美に値する。しかし全ては無駄なことだ」
「黙れ!」
青年は剣を力強く握りしめた。
魔王は青年の覚悟に満ちた顔を見て口元を吊り上げると、どこからともなく自らも剣を呼び寄せた。
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