5312人が本棚に入れています
本棚に追加
入って来たのはなんだか随分懐かしい姿をした、私より1個下の弟。
ビックリし過ぎて、言葉が出ない
だって、弟がこんな所に居る訳が無いんだ。
私はアパートで一人暮らしをしていたのだから…
「兄貴?」
返事をしない私に、弟が不思議そうな顔をして再度声を掛ける。
咄嗟にぬいぐるみを見ると、いつの間にかソレは元の位置に行儀良く収まっていた。
そして今更の様に気付いた
私の部屋の装いが、ぬいぐるみを除いてガラッと変わってしまっていた事に…
『2年が経った後、性別を女に戻すか、男のままで居るかは君次第』
働かない脳内に、ぬいぐるみの台詞が不意に過ぎり
意味も解らず突然嫌な汗が頬を伝った。
そこで漸く言葉の意味を理解し、慌てて自分の体を触ってみる。
なんだ、この硬い胸板は!?
柔らかさを一切感じない腰回りに…
股間に何か付いてるーっ!!!!!?
いっ…
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!
戻せっ!!!今すぐ戻せっ!!!!!何これ何の冗談!?!
ふざけんなお前何黙り込んでんだよぉぉぉぉっ!!!戻してよーっ!!ふざけてんじゃねぇぞぬいぐるみの分際でカスボケっクソ野郎っ!!!どーしてくれるんだっ!!!!?夢か!?夢なら早く醒まさせろ!!冗談でしょ!?ねぇっ!?」
焦り過ぎてぬいぐるみに叫びまくる私は
弟にはキチガイに見えただろう
「母さん!兄貴の気が狂ったっ!」
と大声で言いながら、弟は部屋を飛び出して行った。
な…何がどうなって…こうなったのか…っ
『僕の声は君にしか聞こえない』
不意に聞き覚えの有る声が、直ぐ傍のぬいぐるみから聞こえてきた。
「待って!これ本当に戻して!!私本心で言った訳じゃないからね!?そもそもこれ夢でしょ!?夢だって言ってよっ!!!」
『残念ながら現実だ。
そして今すぐ戻す事は不可能。
君は冗談でもミッションを受け入れてしまったからね。
世界は君が“高校2年の男子”として新たに構築されてしまった。
どう足掻こうとも、君はこの現実から逃れる事は出来ない』
そう言ってニヤリと笑ったぬいぐるみを
私は唖然として見詰める事しか出来なかった
とんでもない返事を…私はしてしまったんだ
最初のコメントを投稿しよう!