はじまり

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入って来たのはなんだか随分懐かしい姿をした、私より1個下の弟。 ビックリし過ぎて、言葉が出ない だって、弟がこんな所に居る訳が無いんだ。 私はアパートで一人暮らしをしていたのだから… 「兄貴?」 返事をしない私に、弟が不思議そうな顔をして再度声を掛ける。 咄嗟にぬいぐるみを見ると、いつの間にかソレは元の位置に行儀良く収まっていた。 そして今更の様に気付いた 私の部屋の装いが、ぬいぐるみを除いてガラッと変わってしまっていた事に… 『2年が経った後、性別を女に戻すか、男のままで居るかは君次第』 働かない脳内に、ぬいぐるみの台詞が不意に過ぎり 意味も解らず突然嫌な汗が頬を伝った。 そこで漸く言葉の意味を理解し、慌てて自分の体を触ってみる。 なんだ、この硬い胸板は!? 柔らかさを一切感じない腰回りに… 股間に何か付いてるーっ!!!!!? いっ… 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!! 戻せっ!!!今すぐ戻せっ!!!!!何これ何の冗談!?! ふざけんなお前何黙り込んでんだよぉぉぉぉっ!!!戻してよーっ!!ふざけてんじゃねぇぞぬいぐるみの分際でカスボケっクソ野郎っ!!!どーしてくれるんだっ!!!!?夢か!?夢なら早く醒まさせろ!!冗談でしょ!?ねぇっ!?」 焦り過ぎてぬいぐるみに叫びまくる私は 弟にはキチガイに見えただろう 「母さん!兄貴の気が狂ったっ!」 と大声で言いながら、弟は部屋を飛び出して行った。 な…何がどうなって…こうなったのか…っ 『僕の声は君にしか聞こえない』 不意に聞き覚えの有る声が、直ぐ傍のぬいぐるみから聞こえてきた。 「待って!これ本当に戻して!!私本心で言った訳じゃないからね!?そもそもこれ夢でしょ!?夢だって言ってよっ!!!」 『残念ながら現実だ。 そして今すぐ戻す事は不可能。 君は冗談でもミッションを受け入れてしまったからね。 世界は君が“高校2年の男子”として新たに構築されてしまった。 どう足掻こうとも、君はこの現実から逃れる事は出来ない』 そう言ってニヤリと笑ったぬいぐるみを 私は唖然として見詰める事しか出来なかった とんでもない返事を…私はしてしまったんだ
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