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さて、
困った事になった。
誰かこの夢の世界から、私を目覚めさせてくれ…
何日寝て起きても、私の体は男でしかなくて、声は低く視界は高く
部屋はまるで男子の部屋なまま。
妄想の世界に過ぎないのであれば、こんな状況楽しくて仕方ないんじゃないかと…
何日も部屋に引きこもって考えてみたけど…
実際こんな事態に直面してしまえば、まるでそんな訳なかった。
とてもじゃないけど受け入れられない。
だって…
…ねぇ?
私一体、どーすりゃいいんですかぁぁぁぁぁ…?
『だから、素直に現実を受け入れて、腹を括って学校に行くしかないんだよ。
まったく…妄想だけなら好き放題するクセに、いざとなったらチキンなんだ…これだから腐女子ってやつぁ…』
ぬいぐるみが、ぬいぐるみの分際で、生意気にも呆れた様な視線を私に向けて溜め息を吐く。
「あのなぁ…
こんなのすんなり受け入れる馬鹿がどこに居る?
よく聞け、私は立ちションが出来ない。チ●コが付いてても未だに便座に座ってしか用が足せん。
気晴らしにうっかりBL漫画なんか読もうもんなら、息子が突然元気になりやがる…
急に低くくなった自分の声に自分でビビる。
かと思えば身長が10センチ以上伸びたせいで視界が高くなって立つのが怖い。
私のこの戸惑いが分かるかぬいぐるみ風情がっ」
『分かる訳ないよね、僕はぬいぐるみだもん。君馬鹿なの?
そんな事で、もう新学期始まってるのに転校早々一週間も不登校なんて…
情けないったらありゃしない。
一歩学園に足を踏み入れてみれば、イケメン沢山のホモパラダイスが待ってるって言うのに…
こんな先ず有り得ない様なチャンスを棒に振るおうとしてる、君の神経が理解出来ない』
「………」
この毒舌なぬいぐるみを、一体何度引き裂いてやろうと思った事か…
しかし出来ない。
出来る訳がない。
だって、小さい時から持ってた一番お気に入りのぬいぐるみ…
どんなに性格悪くても、結局情に負けてしまって…
「…そもそも、私が通う高校…成賢高等学校だっけ?
あそこって、日本の最高峰の大学合格者超いっぱい排出してる、マジ名門お坊ちゃま学校で、私立で学費も高いのに…
なんで家レベルで、しかも私程度の超平凡学力で転校出来ちゃうわけ?」
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