出会い

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『言っただろ? 君はミッションを遂行させる為に男子高校生になったんだ。 だから当然、それに値する事柄も既に自動で補正されている。 一応大学を既に卒業している君が、怠けなければ本来習得出来ていたであろう、最高の学力も君の中に備わっている。 そして…「父親の仕事の都合で転校してきた」君は、父親の職場の社長が理事長を勤める成賢高等学校に、理事長の推薦で授業料を免除された、特待生なんだ』 「……え、ごめん、これ笑うとこ?」 『どこに笑える要素が有る?カスが』 「カスちゃうわお前そんな口悪かったのかよ…いい加減マジで泣くよ?私…」 本当泣きたい… でも… 流石に一週間も引きこもってたら、ちょっと感覚変になってきた。 腐女子ながら、元々アクティブな人種なもので。 部屋にずっと居るのは、正直性に合わない。 あ~あ… 「はぁ… もーなんでもいいや… 完全に遅刻だけど…仕方ない… 取り敢えず学校行ってみようかな…」 『やっとかよ、僕も連れてけ』 「えー… 初登校でぬいぐるみ持ってく男子高校生ってどーなの?」 『僕が行かなきゃ、ミッションは遂行出来ない。 つまり、君と僕は二人で一人な訳だ』 「…お前、人じゃねぇだろ…」 しかし、いきなり男子校に一人で行くのは心細いし、この状況考えたら恐怖過ぎる。 だから仕方無く、生意気なぬいぐるみをリュックのサイドポケットに、顔が出る様に無理矢理突っ込んだ。 『ちょ、苦しいんだけど!なんでここ!?』 「我が儘言うな。顔を出してやってるだけ有り難く思え」 本当に、なにかにつけて生意気な口利きやがって… このぬいぐるみ、今まで触れてこなかったが、まん丸なライオンの形をしている。 見た目だけならキュートと言っていいだろう。 子供の頃動物園に行った時に親に買ってもらった物で、幼心に「エルたん」と名前を付けて呼んでいた。 “Lion”の“L”に、「ちゃん」が上手く言えなくて「たん」と呼んでたのが名前の由来。 随分昔のぬいぐるみなので、大分色が廃れてきている。 まぁこの生意気な輩には丁度いい、寧ろお釣りがくるわ。
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