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今日の予定は、駅ビルの中に在る書店に漫画を買いに行くというもの。
この書店は、俺が女だった時の職場でも有り、当然俺以外のスタッフはこの場で今も働いているわけで…
なんだか懐かしく感じてしまう古巣で、俺が真っ先にした事は
「オーイ!おーはしっ!」
と、コミック売り場で品出しをしていた、元同僚に横から体当たりをするという…
なんとも場違いな事だった。
俺に体当たりされたコミック担当、大橋という女性が、驚いた表情を俺に向ける。
「えっちょっ…どちら様ですか?」
「…あっ」
ここまで言われなければ、自分のしでかした事の阿呆さに気付かなかった、俺の馬鹿さ加減。
そう…
今の彼女が俺を知ってる訳が無いのに…っ!
「やっ!あのっ!
いつもコミックの品出ししてますよね!大橋さんっ!コミック担当さんですか!?」
「…そうですが…」
「や~俺最近よくここでコミック買うんですけど、コミックの品揃えマジ神で!欲しいのいっつも揃ってて嬉しいなーって!こんな素敵な売り場作ってるスタッフさんと是非絡んでみたくて!って言うか!あのっ色々突拍子も無い事言ってスミマセンマジでっ!!!お仕事続けて下さいっ!!!!」
「はぁ…?」
俺のトンチンカンな話に怪訝そうな顔をした元同僚を見て、顔から火が出る程恥ずかしくて
話すだけ話して、直ぐに奥のBLコーナーに足を進めた。
その間に黒木に
「久保っち何が起きたwwwwww」
って超爆笑されたけど…
その次の瞬間
俺を唖然とさせる光景が、突如視界に飛び込んできた。
こんな馬鹿な話が…
起こり得るんだろうか…?
いつもは棚に色んなタイトルがギッシリ詰め込まれ
新刊や売れるタイトルは何冊も平台に置かれ
アイラインには面陳でコーナーを設ける…
通常の書店にしては、4スパンという割と広い範囲で展開されている、BLコーナーのコミック達が…
“只今各タイトル全て入荷待ちです。(ご注文はカウンターでお問い合わせ下さい)”
という貼り紙を残して
一冊も、棚にも平台にも置かれていなかった。
お…
「大橋さんっ!?
あれっ!あれなんですかっ!?BL棚どーしたんスかぁっ!!??」
「へ?あ、あ~…先月末くらいから、突然BLが飛ぶ様に売れ出しまして…出版社も作者も問わず、BLなら兎に角売れるって感じで…
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