先輩の引退

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灼熱と化したグラウンドで滴る汗を拭いつつ あるものは顔に歓喜を表し あるものは真剣にある一点を見定める あるものは絶望に満ちた顔を太陽から背け またあるものは声を枯らしてもなお叫ぶ 「ここやっ!!」と小高い丘に立つ者が見定める先に黒いミットが構えられる 涙声を含んだ声援が 「あきらめるな!!」 「打てーっ!桜井!!」 「まだチャンスはあるぞーっ!!」 「桜井頼むぞ!!」と これまた今にも泣き出しそうに目に涙を浮かべた打者に送られる 両腕が空高くかかげられる、高く上げられた右足を踏み込み、それに連動して捻られた体を介し、鋭く振られた左腕から放たれ一筋の線を生み出す白球 金色に輝くバットがその白球を捉えんと勢いよく振られたが 「ストライクスリー!!――バッターアウト! 集合!」 「「「っしゃーーー!!!」」」 無情にも空を斬り 少年達の夏が幕を閉じる
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