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先日、私が社内のトイレの個室で首を吊ろうとしていた時のこと
「いらっしゃいますか?竹さん。」
ドアの外側から聞こえてきた声に私は自殺の実行を延期しようかと考えた。
自殺する直前の人間と接触していた。
その事実は相手に対して責任と後悔を押し付けてしまうことになるからだ。
しかし、声の主は私のことをはっきりと『竹さん』と呼んだ。
私のことをそう呼ぶのは竹輪だけ
声の主が奴であるなら
私と最後に接触したのが奴なら
遠慮はいらないだろう。
そう、思った。
竹輪なら問題ない。
私が死んでも竹輪なら責任も後悔も抱くことはない。
首吊りは続行だ。
「どうした?竹輪」
声音に焦りが混じらないように気をつけて返答した。
「御用聞きにあがりました。何か入り用な物はありますか?」
つい、ふきだしてしまった。
このタイミングでか
「竹輪らしいな」、と笑い出さずにはいられなかった。
パシリの鏡め
私の人生はもうすぐ終わるが
お前はこれからもお前らしく生きていくんだな。
愉快、愉快。
「……いつもの『缶コーヒー』を頼む。」
「承けターン。他には?」
「と、そうだな、あとは『練炭』と『七輪』が欲しい。」
「承けターン。」
「よろしく、頼むよ。」
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