3 魔女の詩(うた)

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 木と木の隙間から時折吹き込んでくる風が肌を刺すように冷たい。が、それでも外に居るよりは遙かにマシであろうと思われた。  丸木で組まれた粗末な小屋である。  床にはたっぷりと埃が溜まっている。  猟師達が夏の間だけ使う山小屋であろう。  ぴゅうぴゅうと、すきま風が鳴る。  じゃらん、じゃらん、と、指が弦を弾く。  古びたリュートを鳴らしているのは山高帽を被った若者であった。  片膝を立てる形で腰を下ろし、リュートを抱くように奏でている。  帽子の脇から垂れている褐色の髪が床に届きそうなほど長い。  ”雪が舞い、風が鳴る”  ”凍てつく指先、凍える心”  リュートの音に合わせて若者が唄う。  ”こんな日は、きっと会える”  ”黄金の髪、エメラルドの瞳”  ”残忍で美しい、シャインウッドの魔女” 「へぇ~、即興にしちゃぁ結構イケてるじゃねーか」  リュートを弾く若者を茶化すように大袈裟に手を叩いたのは、一見して無頼の徒とわかる目つきの悪い男であった。年の頃なら二十五、六。短い銀髪を逆立て、腰には長剣を帯びている。 「どうも」  若者はそう言ってリュートを壁に立て掛けた。 「なんだ。もうやめちまうのか?」 「こう寒くちゃ手がかじかんじゃっていけませんね。一つ弾いたら指を温めないと」  若者は一度両手に息を吹きかけてから、その手をズボンのポケットに突っ込んだ。 「ふん。根性のねぇ吟遊詩人だな」  銀髪の男はそう言ってごろりと横になった。 「しかしやみませんねぇ。この分だと今日はここに泊まるしかなさそうだ。やれやれ」  「けっ、贅沢言ってんじゃねーよ。野宿するよか百倍マシだ。こんなところに山小屋が有っただけでも有難いと思いな」 「ははは。確かに。こんな日に野宿なんかしたらそのまま永眠しちゃいそうだ」  若者がそこまで言った時、外からドアが開けられた。
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