2 死神の死

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 さらさらと、粉雪が舞っていた。午前中は良く晴れていたのに、山の天気は気まぐれなものだ。  フェルマットは三方を四千メートル級の山々に囲まれた山岳都市であった。街の規模は小さいが、大国ゴーサラを南北に縦断する太い街道と、モンドランドからブランティスまで伸びる東西の幹線道路との交差点であるため意外と栄えている。旅人が落としてくれる金で潤っているのだ。  ゴーサラ国内から来てこれから西のモンドランドか東のブランティスに行こうとする旅人や、逆にこれからゴーサラの主要都市に向かって南下する旅人が多い中、ここから更に北の山岳部に向かう旅人も少数ではあるが存在する。そんな少数派の旅人が集まっているのがフェルマットの街の北側に一軒だけ有る宿屋であった。  ”山賊亭”という勇ましい名前の割には、白と青でデザインされたモダンな建物である。  一階がカフェになっていて、午後に出立を予定していた幾組かの旅人が、天気を睨みながら出立を明日に延ばすか否か話し合っている。雪は降り始めたばかりだが、本降りになれば峠越えに難儀するのは間違いない。  店内には四人掛けのテーブルが八つ置かれていて、そのうち六つ程が埋まっていた。大体が二~三人のグループだが、中には一人で俯きながら飲んでいる旅人も居る。 「いらねぇだと?」  男がそう言って椅子から立ち上がり、隣のテーブルの二人組を睨んだ。  額に赤い蜘蛛の刺青をしている。 「い、いや、そうは言ってないですよ。で、ですけど、その……」  言われた旅人は語尾を濁らせた。足が微かに震えている。 「峠の先には魔女が出るって噂だぜ? だから俺達が護衛してやろうって言ってるんじゃねぇか。こいつは親切心で言ってるんだぜ?」  赤い蜘蛛の男がそう言って微笑み掛ける。が、笑っているのは口だけで、目は恫喝するように旅人を睨み付けている。
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