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「でも本当に、誰がやったんでしょうねぇ。ギンジさんの言うとおり、後ろからこっそり忍び寄って斬るにしても、よっぽど上手くやらないとアランさんなら気付くでしょうしね」
「俺はよ、そいつがどうも腑に落ちねぇのよ」
「へぇ、どう腑に落ちないのですか?」
「おめぇもよ、二人の死体は見ただろうが?」
「見ましたよ。アランさんは後ろから不意打ちで、伯爵はその後正面から、バッサリ斬られていましたね」
その事に関しては村の者も皆一致した見解であった。伯爵を斬るにはどうしてもアランを倒さなければならない。ならば、先にアランのほうを不意打ちで斬るのがセオリーであろう。
「本当にそうなのか? 俺にはどうもそうは思えねぇ」
ギンジは納得が行かないと言うように、強い口調で異を唱えた。
「違うって言うんですか?」
「不意打ちで先に殺られたはずのアランが両手でしっかり剣を握りしめていて、その後殺られたはずの伯爵は剣を抜く間も無く斬られてる。おかしいじゃねぇか。こいつは俺の勘だがよ、先に斬られたのは伯爵のほうだと思うぜ」
「うーん……ギンジさんの言うこともわからなくはないけど、それだと犯人は伯爵を斬った後に、剣を抜いたアランさんを背中から斬ったことになっちゃいますよ? その方がヘンじゃないですか?」
「うーむ……」
ギンジが腕組みをたしまま唸る。
アルトも同じように考え込んでいる。
アランを不意打ちで斬ったのだとしたら、何故アランは剣を握っていたのか? 何故伯爵は剣を抜いていなかったのか?
伯爵を先に斬ったのだとしたら、どうやってアランを背中から斬ることが出来たのか?
どちらも中々の難問である。
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