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第二図書室としろいぱんつ
――4月10日
高校2年生になった俺には一つだけ楽しみがあった。
昨年末のテストで学年一位の成績を取った俺は、この私立クランバイン記念学園。通称、クラ学の制度によって「第二図書室」を占拠した。
別にこの部室は帰宅しない部が占拠しました的なのりではなく、優秀な生徒にはそれなりの接待で、という創設者のクランバインさんの気まぐれで作られた校則のもとで合法的に認められたパラダイスである。
「……これでゆっくりできる」
とにかく、一人で居れる空間が欲しかった。
家では妹に『お兄ちゃんなんてくさい、嫌い、犯される!!』なんてどやかく言われ、母親には朝起きたら『今日は夕食いるの』と朝食も口にしてないのに聞かれる。
俺は家族にいらない存在なんだ。居場所なんてない。
老朽化したプレハブ校舎。
日当たり良好、冷暖房完備。
見上げるほど高い本棚に囲まれた8畳の部屋の真ん中には歴代の優等生が使用していただろう木製のテーブルが設置してある。
ここには誰もこない。なにせ俺には友達がいない。
あーこれで清々する。
そんなことを思っていたのも束の間。おんぼろスライド扉を閉め中に入ると、先ほどまで死角となっていたところに何かが置いてあった。
「……ん」
ひらひらした常識人なら必ず装着しているだろう賜物のスタンダードタイプ。つまり、しろいぱんつが脱ぎ捨てられていた。
流石に大通りや地下道だったら余裕で無視なのだが、ここは学園でしかも俺のパラダイス。
放置するのは野暮ではないか?
次発見する人物が俺みたいに聡明で健全な心の持ち主ならありがたいのだが、退去したあとに警備員さんに見つかったらやばくないか?
最近は警備員の低モラル化も否めないし、これが刑事的事件に発展したら俺のパラダイスにも危機が。
うん、これは適切に処理しよう。
まずはこれが誰の持ち物なのかを判明する必要がある。
「こ……これはパラダイスを守るため守るため守るため……」
目下のしろいぱんつのひらひらをつまんで目の前に。
ほんのり甘酸っぱい香りがするのは柔軟剤の匂いなのか……それとも持ち主のた……いやいやいや変なことを考えては駄目だ。
これでは俺が変態に間違われてしまう。
いや、今更関係ないか。
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