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「……言いたくないなら言わなくていい。別に俺は今日のことを言いふらす気はない」
そもそも言いふらす友達がいない。
「……ほんと?」
「ああ、誓う」
「誓うって……どれくらい?」
「約束破ったら……東京サンフランシスコ間をバタフライで横断してやる」
「……それ。もう一回言って」
俺はごほんっ、と息を整える。
「えーと、私(わたくし)東條時貞は約束を破った暁には東京サンフランシスコ間をバタフライで横断することを誓います」
カチャリ、そんな音が彼女の手の内から聞こえた。
「はい……録音かんりょー、あざしたー!」
「はぁ!?!?」
「いやーこれで墓場まで留海香の秘密は守られましたっと」
「死ぬまで犯罪者ですか!?!?」
残酷すぎる……この女。
「っというわけだから。あんたは留海香のパシリけってー。これからもよろしくねー」
「…………」
黙秘。
こんな後輩に俺のパラダイスを邪魔されるわけにはいかない。
一年かけてやっと得ることできた居場所だ。
そう簡単に壊されたくない。
クラスメイトに馬鹿されず、妹や母親に邪魔されることはない。
それをこんな小娘に取られるわけにはいかない。
「……一つ約束してくれ」
「約束? それならさっき……」
「これから先、一切ここに来ないでくれ」
「え?」
「ここは俺が一年必死に勉強して、周りにでくのぼうだと呼ばれても必死に耐えて、やっと手にした居場所なんだ」
入学時俺は同じ中学の奴らや席が隣だった佐渡くんと昼食食べたりカラオケに行ったり、わりと充実した生活を送っていた。
俺が「ロリコン」だと知れ渡ったことで崩壊した。
きっかけは突然だった。
偶然カバンに入っていた小学生が大人な行為をしている本が、抜き打ち検査で見つかった。
その時担当していた先生は無粋な俺を嫌っていたのかもしれない。
その場で見せしめにされ、クラス全員に伝わった。
親は呼び出され、三者面談。
厳重注意で済んだが、家族にも秘密にしていたことがばれ、仲が良かった妹からも軽蔑された。
もう、俺に共感してくれる人はいない。
友達なんて……もう作れない。
俺はこの世界の不条理に絶望した。
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