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「イピリアって言うんです。アボリジニの崇拝していた精霊で」
「ずっと沼の底で眠ってるんですけど、年に一回だけ地上に現れてお腹の中のモノを空へ吹き上げるんです」
「それが大きな雨雲になって、乾季の終わりを告げるんだとか」
偶然僕と佐藤さんだけ残業で、偶々ぶつかっちゃって、佐藤さんの携帯が落ちて。
表示された待ち受けが妙なトカゲのイラストだった。
髪の毛と髭が生えている、虹色のトカゲ。
「雨を降らせた後、イピリアはまた沼に……あ、あのごめんなさい。どうでも良い事語っちゃって、あの」
落ちた荷物を慌てて拾い集め、佐藤さんは行ってしまった。
いつもは物静かな佐藤さんの、あの熱心な語り口。
トカゲの待ち受けにはきっと彼女なりの理由があり、想いがあり。
「……」
今まであまり話した事がなかったけど、その内機会を見つけてまた話してみたいな、なんて。
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