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新しく刃を付けた大鎌を、一歩踏み出しながら左上に向かって逆袈裟斬りに振る。その際柄を持つ両手を緩め、握る部分を槍の石突に当たる部分にずらしながら左手を離す。それは大鎌ならではの変則的な斬撃。突然伸びた大鎌のリーチに戸惑い、飛行型の魔物が両端された。
間髪入れずに左手で刃の近くを掴み、そこを基点に右手で大鎌を半回転させながらまた一歩前進。石突がシーフゴーレムに当たった瞬間に大鎌をピタリと静止させる。変則逆袈裟斬りのスピードを生かした石突によるインパクト。それが刃の部分が一番重い大鎌で行われた事により、シーフゴーレムは飛び散った。
その爽快感に酔いしれながら、大鎌の刃を水平に。石突を飛び掛かって来たスレイブウルフの脇に向けて地面を蹴る。槍を持った突撃兵の様な突進は、湾曲した鋭い刃の効果で擬似的な居合い斬りと化した。
スッ───
刃に歯応えを感じたと同時に大鎌を振りながら一回転。スレイブウルフは愚か、周りで襲い掛かるタイミングを図っていた魔物達までもが大鎌の餌食になる。その遠心力を霧散させない様に気を配りながら、男は大鎌を手に舞い続けた。極限までパワーロスを抑え、攻撃の隙を突く様に振られ続けた大鎌は膨大な遠心力を味方につけて徐々に威力を増していく。まるでアクションゲームの様に、コンボ数とダメージが比例して上昇していく。
大鎌の特徴である巨大な刃の重量が遠心力を生み、男の技量が遠心力を保持し続ける。一体どれだけ大鎌を振ったのか、一体どれだけ努力したのか。思考が現実となる、言い換えれば誰でも魔法が使える現代においてそれは異常だ。そしてその異常が、形となって現れる。
『Saith bread :scramble 』
回転しながら大鎌の刃を射出。異常な威力を孕んだ刃が遠心力に振られ、渦巻き状に滑空する。風も魔物も巻き込んで、黄色い螺旋が赤い螺旋を描く。男の連撃を生き残った臆病者達の命が、根こそぎ刈られていった。
「サイクロン………ってか?」
魔物の大軍と男の激突から三時間。真っ赤な真っ赤な太平洋に、黄色い大鎌が浮いていた。
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