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粉雪の舞い散る薄雲の空の下。
パチパチと小枝の爆ぜる音を上げながら、
燃え上がり始めた炎が、白く細い少女の足を舐め上げた。
「う...ぁ、あァ..っ」
街の広場の中央に設えられた火刑台の上。
少女は身を捩って、苦悶に満ちた呻き声を
上げた。
炎は、冬の冷たい風に煽られて、瞬く間に
燃え上がっていく。
舐め上げる炎が少女の薄汚れた服を焼き、
火の粉となって空へ舞い上がった...。
罪人である少女の身体は日々の拷問により
もう…
何処も満足に動かす事が出来なかった。
二つの落ち窪んだ青い目が、いっぱいに
見開かれ、それが目の前の民衆を凝視した。
彼らは自分を殺せと叫ぶ。
彼らは自分に恐れ慄く。
…何故？
……何故？
………何故こんな事になった？
容赦なく燃え上がる炎に身を委ねながら、
少女は空を見上げた。
熱い…。
痛い…。
苦しい…。
空を見上げる少女の目から涙が零れ落ちた。
―貴方は何処...？
すると突然、雲が割れた。
雲間から射した眩い白い光が、少女の上に
降り注いだ。
「あ...、あぁ..」
見上げ震える少女の顔が喜びに満たされた。
そこに現れたのは、一人の輝く天使だった。
白銀の髪に金色の瞳。
目が覚める程に美しい姿･･･。
けれど...
天使は人々が慄く程に哀れに傷付いていた。
無残に切り裂かれた白い翼から、滴り落ちる真っ赤な血。
纏う衣装もボロボロで、露になった天使の肌にも、また赤い血が滲む。
天使は火刑台の上に降り立ち、炎に巻かれる少女を愛おしそうに腕<ｶﾅｲ>に抱いた。
「もう..戻らないかと...思ったぞ..。」
少女が、微笑みながらそう呟いた。
「約束の名を...受け取りに来ました。」
天使の言葉に、少女の眼差しが驚きの色を
帯びた。
しかし、やがて少女は幸せそうに微笑むと、ゆっくりと頷いた。
少女の唇が、天使の耳元で何かを囁いたが、それは燃え上がる炎の音に掻き消され、
天使以外の誰の耳にも届く事はなかった。
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