0人が本棚に入れています
本棚に追加
御伽噺
ある小さな村に一人の少女が暮らしていた。
少女は信心深く働き者の優しい娘でした。
ある日、少女の国に隣の国が攻めて来た。
少女の暮らす村にも敵はやって来て沢山の
村人が殺され、村は滅茶苦茶になった。
少女は哀しみ、神に祈った。
すると、少女の目の前に炎の剣を持った
天使が現れ、言った。
「私はあなたにこれを授けます。」
少女は剣を手に取り頷くと、戦士になって
敵を滅ぼす事を誓った..。
神の剣と天使の守護を受けた少女の軍は、
負ける事がなかった。
やがて敵は、少女の国に降伏の印として、
沢山の財宝を贈った。
少女の国も、それを受け取り二つの国は
戦うのを止めた。
しかし...
少女だけは戦う事を止めなかった。
何故なら、少女の使命は殺戮の侵略者へ、
神に代わって罰を与えることだったから。
人々は、「勝利の女神」「神の子」と崇めたこの戦いの英雄が、おかしくなったと思った。
独りになった少女は敵に捕らえられ、少女の国はそれを助けなかった。
少女の国の王様は英雄の命よりも、
平和と金銀財宝の方が大切だったから。
やがて、少女は恐ろしい「殺戮の魔女」として処刑される事になった。
火刑台に上がった少女は空を見上げ泣いた。
すると、神の声を届けた天使が降りて来て
少女を優しく抱き締めた。
嬉しそうに微笑みながら、少女は天使の腕の中で燃え尽きて灰になりました。
しかし、少女が燃え尽きたあと恐ろしい事が起こりました。
少女の骸を抱き締めていたた天使の、美しい翼は人々の前で醜く崩れ落ち、天使の瞳が
地獄の炎の様に真っ赤に染まった。
天使は言った...。
「これ即ち堕天...。」
その恐怖にそこに居た人々は次々に息絶えていった。
悪魔誕生の瞬間を目にして、生きていられる人間など居なかった。
...そこに居た聖職者を除いては。
しかしその聖職者達も、闇に堕ち悪魔を崇拝する者達へ変わっていったのだと
後の人々は語る。
可哀想な少女の骸を抱き締めて、その後
堕ちた天使が何処へ飛んでいったのか、
誰にもわからない....。
―終わり―
最初のコメントを投稿しよう!