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元は人間だった命とはいえ、ゾンビはまさに獣だ。
狂暴で恐れを知らず、血肉を求め、ウイルスを撒き散らして増殖する…。
だが、凍弥たちはこれまでに数えきれない程のゾンビを葬ってきた。
個別にカウントすれば、1000体は軽く超えている。
恐れなどはないし、そうしなければ生き残る事はできない…。
早紀の言う事こそ、"今更"だ。
「あ……でも、誰か1人はここに残らなきゃダメだよね…」
「あー……早紀ちゃんの護衛役?」
「ですねー…。どうします?」
いざ、渋谷サンライトへ突撃というところで、六人は顔を見合わせた。
化物クラスのゾンビは見当たらない…。
誰が残ってもいいのだが、誰でもいいだけになかなか決まらない。
護衛役を決めるだけで1分が過ぎようとした時に、唯が手を上げた。
「だったら、ボクが残るよ。
どうせ能力は控えないといけないんでしょ?鏡花ちゃん」
「あ……はい。
もう何の違和感も感じてないと思いますが、1週間という期間は脳を安静にしないと、命の保証はないかと……」
「ふむふむ……だったら、このボクがばっちり早紀ちゃんを守るから、皆は暴れてきてくださいな!」
唯は手でVサインを出し、ニヤリと笑って五人を見回す。
明るい表情の唯に釣られて、五人も思わず笑みをこぼした。
こんな話題で談笑しているのは、生き残った生存者たちの中でごく僅かだろう…。
能力者ならともかく、普通の人間ならば、よっぽど安全な場所にいないと安心はできない。
1分1秒という時間をゾンビから逃げ切るのも大変なのに、ゾンビの大群に突っ込むようなバカな真似はしないだろう。
「武器弾薬は当然として、ついでに自衛隊の保存食みたいなのが欲しいとこかな…できるだけ美味しい物」
半ば一方的に役割を決めた唯は、荷台から缶ジュースを取り出して車止めのブロックに腰を下ろした。
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