第11章 兆し

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元は人間だった命とはいえ、ゾンビはまさに獣だ。 狂暴で恐れを知らず、血肉を求め、ウイルスを撒き散らして増殖する…。 だが、凍弥たちはこれまでに数えきれない程のゾンビを葬ってきた。 個別にカウントすれば、1000体は軽く超えている。 恐れなどはないし、そうしなければ生き残る事はできない…。 早紀の言う事こそ、"今更"だ。 「あ……でも、誰か1人はここに残らなきゃダメだよね…」 「あー……早紀ちゃんの護衛役?」 「ですねー…。どうします?」 いざ、渋谷サンライトへ突撃というところで、六人は顔を見合わせた。 化物クラスのゾンビは見当たらない…。 誰が残ってもいいのだが、誰でもいいだけになかなか決まらない。 護衛役を決めるだけで1分が過ぎようとした時に、唯が手を上げた。 「だったら、ボクが残るよ。 どうせ能力は控えないといけないんでしょ?鏡花ちゃん」 「あ……はい。 もう何の違和感も感じてないと思いますが、1週間という期間は脳を安静にしないと、命の保証はないかと……」 「ふむふむ……だったら、このボクがばっちり早紀ちゃんを守るから、皆は暴れてきてくださいな!」 唯は手でVサインを出し、ニヤリと笑って五人を見回す。 明るい表情の唯に釣られて、五人も思わず笑みをこぼした。 こんな話題で談笑しているのは、生き残った生存者たちの中でごく僅かだろう…。 能力者ならともかく、普通の人間ならば、よっぽど安全な場所にいないと安心はできない。 1分1秒という時間をゾンビから逃げ切るのも大変なのに、ゾンビの大群に突っ込むようなバカな真似はしないだろう。 「武器弾薬は当然として、ついでに自衛隊の保存食みたいなのが欲しいとこかな…できるだけ美味しい物」 半ば一方的に役割を決めた唯は、荷台から缶ジュースを取り出して車止めのブロックに腰を下ろした。
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