第11章 兆し

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「唯お前…サボりたいだけだろ?」 「早紀ちゃんを守るのも立派な仕事ですぅ」 笑いながら言い合う翼と唯。 唯は缶のタブを開けて飲み物を口に運び、すでに休憩姿勢だ。 「じゃあ、僕たちの仕事はゾンビの処理だな…」 翼は話を切るように唯から視線を外し、目的地の方へ向き直す。 「…人員配置は、僕と姉ちゃんで建物内。 鏡花、明日香、凍弥さんの3人で建物の外……。 それでどう?」 「あれ?翼が明日香ちゃんとペア組まないのって珍しいね。 先輩と由理さん、そして残りの3人で組むのがセオリーじゃない?」 唯は飲み物を一口飲み、頭に?を浮かべた。 「バーカ…僕だって能力は極力使っちゃダメなんだから、範囲攻撃できる2人が組んだら3人の方が大変になるだろ?」 「…あ、なるほど!」 「あら、翼のくせに……たまにはまともな事言うのね」」 納得したように唯は缶を持った手を軽く叩き、由理はバカにしたような笑いで翼をからかった。 「ひっでーな……。 凍弥さんだって同じ指示を出したと思うけど……ねー、凍弥さん?」 翼は、凍弥に同意を求める目線を送る。 凍弥は正直、唯の言った通りの分け方をしようとしていた。 だが翼の言う方が間違いなく正論である。 「……あぁ、俺も同じ事言おうと思ってた」 一瞬遅れて、凍弥は返事を返す。 こういう作戦に、いちいち私情を挟まないのは鉄則中の鉄則だ。 凍弥は由理といたいという自分の欲を抑え、早速指示を飛ばした。 「鏡花、明日香は俺と正面から堂々と突っ込む! 翼と由理は二階部分から突入、順々に上の階へ移動してゾンビになった自衛隊の方々を救ってくれ!」 「おっけーです…いきますよ!」 「了解ー!」 「じゃ、殲滅後に合流!」 「皆無事でね!」
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