第1章 幕開け

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何か声がする扉を開けると、唇に何かが当たり、目の前には…。 「「――!!」」 唯の顔が眼前にあった。 扉が横開きだったのが災いし、二人はキスをしてしまっていた。 2人は一瞬遅れて、唇を合わせている事に気付く。 「(うわっ…。この子、こんなに可愛かったんだ…)」 改めて見ると、小顔で目が大きくて、とても可愛い。 夕登は唯の顔をまじまじと見て、顔を真っ赤に染めた。 「――ぷはっ!あああぁぁ…いやああぁぁぁ!!」 唯は慌てて唇を離し、悲鳴に近い大声を上げる。 その場にいた全員が、その光景を傍観していた。 「……長かったなー。凍弥さん、何秒くらいキスしてた?」 「知らん。聖次さん、数えてました?」 「いやー、僕も分からん」 「大体5秒ってとこね。 みんなの前で唯ちゃんにキスするなんて、大胆ねー」 「ですねー…」 夕登にとっては、聞き慣れない声が多数聞こえてくる。 その内一人は、何だかとても懐かしい感じがする。 「ねぇ!なに冷静に分析してんの!? あーー!!」 唯は頭を抱えながら、狂ったように叫び出す。 「ねぇ君!…夕登君!?何してくれちゃってるの!? わざとなの、ねぇ!?ボクに潰されたいの!?ねぇ!聞いてる!?」 夕登の首元を掴み、力任せに身体を揺する。 夕登は簡単に持ち上がり、一気に首が締まるが、夕登も唯の手を掴み、引きはがそうとする。 「うっ!く…苦し……!」 抵抗するが、思いのほか唯の力があり、簡単に振りほどけない。 少しずつ意識が遠のいてくる。 「翼!」 「分かってます…よ!」 瞬間、身体に静電気が走ったような感覚に陥った。 全身に静電気を受けた様に、ピリピリとした痛み。 痛みはすぐに収まり、呼吸が楽になる。 「げほっ、げほっ!何が……!?」 夕登は喉を抑えながら前を見ると、倒れている唯と見知らぬ男女。 そして……。 「随分と……久しぶりだな、夕登」 夕登は一瞬それが誰だか分からなかったが、段々と記憶が蘇ってくる。 「と……う……や…? お前、凍弥じゃないか!」 その男は、今までで一番付き合いが長い友人、鬼龍凍弥だった。
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