第2章 生存者

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2030年.6月23日.AM10時。 「くっ!」 飛んでくる氷の玉に手を向け、桐崎夕登はすぐに風の防御壁を作り出す。 バキイィン! 氷の玉は、見えない壁にぶつかったように砕け散った。 「夕登、そのくらいの攻撃は避ける! それと、わざわざ手前に防御壁を張るのに、いちいち手を向けない!」 鬼龍凍弥は、そう言って再び氷の玉を作り出す。 今度は、一つや二つではない。 数発の氷の玉の矛先が、夕登に向いている。 「ちょ……」 「発射!!」 「いやああぁぁぁ!!」 ちなみに、何故こんな拷問のような事をしているかというと…。 ――数時間前。 「夕登、今まで…よく生きてたな!」 司令室、という名目の院長室で、凍弥と再開した頃。 「…けほっ!お前も、よく無事で…」 如月唯にやられ、ふらふらになっている身体を起こす。 「身長…また伸びた?何センチだよ?」 「179センチ。夕登は相変わらずチビだなー。 中学生か高校生でも、お前よりも身長はあるぞ?」 「ほっとけよ…」 「凍弥さん、この男が…さっき話してた同級生って人?」 ロン毛の若い男が、凍弥に問い掛ける。 「そうだ。…ひとまず、皆自己紹介な。 夕登とは長い付き合いになるだろうから…」 全員が軽く頷くと、一人ずつ簡単な自己紹介を始めた。 「長瀬河翼、20歳、僕の能力は"雷"。 さっき唯を気絶させたのも、僕の力ね。よろしく」 そう言うと、翼は手のひらで黄色い玉を出して見せた。 バチバチと音を立て、電気が弾けている。 「で、私は長瀬河由理、26歳。 一応、こいつの姉よ」 翼の頭をくしゃくしゃと撫で、由里は言った。 「私の能力は"水"。 ……最悪、断水しても私の力で何とかなるけど…。 出来るだけそうはなってほしくないわね…」 由理は近くの電気ポットを開け、何も無い所から水を入れて見せた。
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