壱.

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「そ、そうだけど……」 「こいつは俺たちを舐め切っている。何か強い罰でも与えてやらないと覚えないみたいだな」 父は林檎の胸ぐらを掴んで持ち上げたまま踵を返した。 「いやあぁぁ!!助けて!恐いよセイド!!いやあぁぁ!!」 「林檎!!」 父の大きな背中の横から、たくさんの涙をこぼす林檎の顔が見えた。 手をこちらに向けて助けを求めている。 ーーだけど、僕は何もできなかった。  父が言うことは間違ってはいない。絶対に正しい。 そうだ、林檎が調子に乗っていたんだ。 いつも僕に命令ばっかして……悪いのは林檎なんだ。 いいクスリだ。これに懲りて林檎も大人しくなるだろう。 ーーそうだろ?違う? じゃあなんでこんなに罪悪感を感じているんだよ。
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