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――それから十年の月日が流れていた。
クレアヴァースで最大の大きさを誇る国アーカイブ。
ここには十五年前、世界の秩序を守るため、犯罪者の取り締まりを行うために設立された組織、ウラヌスが存在する。
国の中心街の中央に聳え立つ、山のように巨大な宮殿がウラヌスの本拠地。
一般人も出入り可能な正面門と呼ばれる入り口で、人々が行き交う。
そこから、銀髪で右目に眼帯をつけた男性が走ってきた。白のカッターシャツの上に、金属品がついた黒革製のロングコートを合わせている。黒色のパンツに黒のブーツ。背中には自分の背丈より、少し大きめの長剣を備えている。
「アポロン――――! 貴様また、私に恥をかかせたな!!」
眼帯の少年アポロンに、怒声を撒き散らしながら追う女性。クリーム色の長い髪に、薄い緑色の瞳を持つ。白のコスチュームを身にまとい、朱色の外套を腰に巻いている。
「知らねぇよ。支部長さんよ」
アポロンは後ろに振り返り、意地の悪い笑みを浮かべた。
「クソ――帰ってきたら殴り飛ばす」
支部長は左の手で腫れた顔をさすったあと、拳を握りしめてアポロンの背中を見据えていた。
レンガ造りが目立つ市街地を、風のように駆け抜ける。後ろに振り向き、支部長が追って来ていない事を確認。減速してゆっくりと歩く。
「あ~疲れた。支部長はやっぱりドジだな。バナナの皮で滑ってこけるなんて」
アポロンの表情はとても満足そう。終始思い出し笑いをしていた。街の人に怪訝な目で見られているが、本人は全く気付いていない。
市街地を抜けると、四方に噴水が設置されている広場に着く。その中央に堂々と構える古びた聖堂は、城と何ら変わりない外見をしている。
低い石段を上り、聖堂の中に入っていくアポロン。
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