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満月が頂の広場を照らす中。二つの剣が交じり合い、金属音を響かせながら火花を散らしている。
その剣を操っている二つの影の正体は、白銀の髪を持つ二人の少年。
一人は、白銀の髪に、精悍さが滲み出ている顔立ち。右目の緋色の瞳が屈強な光を放つ。
対するもう一人は、長めの白銀の髪に、怨念の籠った鋭い瞳。底なしの禍々しさが体から滲み出ている。
二人の衣服の黒のローブには所々穴が空いている。
白い息が舞い、乱れる呼吸を落ち着かせる二人。
凍えるような気温にも関わらず、シバリングをする必要は二人にはなかった。目の前にいる敵に集中し、隙を見つけて殺害。この事しか頭にない。
睨み合い、お互いに距離を置き、間合いを確認する二人。張り詰める緊張で下手に動くことは命取り。そんな中、一陣の風が吹き荒れた。
――刹那。長めの白銀の髪をたなびかせ。首から血が噴射し、雪の絨毯に墜ちていった。ボフッとクッション性のある音と共に――。
緋色の瞳を持つ少年は、浮浪者のような足取りで崖に近づく。
「もういいよ。疲れた……僕の存在理由なんて何の価値もないよ」
頂から見える下の景色。後ろに振り向いて少年を数秒眺めた後、彼は頂の広場の崖から飛び降りた。
慈悲を持って――――
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