図書室ストーリー ~佐奈&光希~

4/9
前へ
/9ページ
次へ
教室に入ると、窓の外を眺めている友人を見つけた。 「おはよ。しぃちゃん」 「…佐奈か。おはよ」 少し影があって、近寄りがたい雰囲気のある椎名千影(しいなちかげ)はいつも一人だった。 誰かとつるんで歩き回る意味が解らなければ、毎日話す事も無い。と前に本人が言っていたので、一人でいる理由はそこにあるのだろう。 「今日の調子は?」 「ん~…上々かな」 今日は少し機嫌が良いようだ。 窓際の後ろから三番目の席が佐奈の席。 しぃちゃんは大体佐奈の席を背後に窓の外を見ている。 「…………」 「…………」 無言が多く、会話は少ない。 そこに相手が居ればそれで良い。 それが二人の『友達』と呼べる形なのだ。 席に着いて、教科書や筆記用具を鞄から机の中に移し終えると、佐奈は頬杖をついてしぃちゃんの背中を見つめた。 「…来月で終わりか」 視線を外さずにしぃちゃんが呟く。 「推薦貰ってるから高校も一緒だね」 笑顔で佐奈が言うと… 「……嫌な事思い出したよ」 なんて、本当に嫌そうな顔で振り返って言うしぃちゃん…。 「ひどっ!」 「でも…佐奈だから良いや」 視線を外に戻す瞬間、しぃちゃんは少し笑った。 そう、しぃちゃんはこういう人。 普段なかなか笑わないし、口を開けば冷たい言葉ばかり…けれど、本当は凄く相手の事を考えている優しい人。 そんな良い部分を佐奈だけが知っていた。 「椎名先輩!」 けれど最近は… 「…またか」 「憧れの椎名先輩との思い出作り!」 「………分かってるよ…」 「…本当は嬉しいくせに」 「佐奈!うるさい!」 教室の入り口で待つ下級生の女の子たち。 その途中で佐奈に指を指して渇を入れるしぃちゃん。 (本当に素直じゃない…) しぃちゃんの素敵な笑顔や、優しい部分に気付いている人も増えて、あぁして教室まで訪ねてくる下級生が居る。 少し鬱陶しそうにしていたけれど、結果…微笑んじゃったりしている所がしぃちゃんらしい。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加