592人が本棚に入れています
本棚に追加
放課後。
テオドールに案内されてきたのは、荷馬車だった。
「貴族様がね、家に帰る用事があるんだって。
僕たちはそこに乗せて貰えるんだ」
明日は学校休みだし、そういうこともある……のか?
貴族だし色々優遇されるんだろうけど、そこに俺たちが便乗できる理由がわからない。
ガタゴトと激しく揺れる車内の中は、車輪の音以外静かなものだった。
唯一喋る気のあるテオドールがダウンしてたからな。
そうして、揺られること3時間。
「宿、とかは決めているんだろうな?」
馬車から降ろされた時には、あたりは既に夕闇に染まっていた。
「なんとかなるかなって」
「あ?んなもんそこらへんで寝りゃあいいだろ?」
今更だが、リュックを背負っている3人。
……日帰りできると思ってたのは俺だけか。
しかし、宿とか子どもだけで泊まれるものなのか?
連れられるままに、いくつかの安そうな宿をまわる。
結果、全滅。
そりゃそうだよな。金払えるようには見えないだろうし。
本気で泊まれると思ってたのはテオドールだけなようで、残り2人は無駄足を食ったとばかりに嘆息。
身を縮めて、泣きそうになっているテオドールを眺め、俺はため息混じりに言った。
「ここから少し歩くが、アテがある。……行くか?」
最初のコメントを投稿しよう!