9

4/11
前へ
/117ページ
次へ
放課後。 テオドールに案内されてきたのは、荷馬車だった。 「貴族様がね、家に帰る用事があるんだって。 僕たちはそこに乗せて貰えるんだ」 明日は学校休みだし、そういうこともある……のか? 貴族だし色々優遇されるんだろうけど、そこに俺たちが便乗できる理由がわからない。 ガタゴトと激しく揺れる車内の中は、車輪の音以外静かなものだった。 唯一喋る気のあるテオドールがダウンしてたからな。 そうして、揺られること3時間。 「宿、とかは決めているんだろうな?」 馬車から降ろされた時には、あたりは既に夕闇に染まっていた。 「なんとかなるかなって」 「あ?んなもんそこらへんで寝りゃあいいだろ?」 今更だが、リュックを背負っている3人。 ……日帰りできると思ってたのは俺だけか。 しかし、宿とか子どもだけで泊まれるものなのか? 連れられるままに、いくつかの安そうな宿をまわる。 結果、全滅。 そりゃそうだよな。金払えるようには見えないだろうし。 本気で泊まれると思ってたのはテオドールだけなようで、残り2人は無駄足を食ったとばかりに嘆息。 身を縮めて、泣きそうになっているテオドールを眺め、俺はため息混じりに言った。 「ここから少し歩くが、アテがある。……行くか?」
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

592人が本棚に入れています
本棚に追加