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「……そんなに気になるなら自分で調べろ」
眉間にしわを寄せて一言。
テオドールはビクついているが、俺にはわかる。
あれはただ面倒になっただけだ。
ルクスはシエラと薬をつくること以外にはとことん興味がないからな。
そして、あまりにしつこければ本当に不機嫌になる。
そうなったら宥められるのはシエラだけだし、シエラはシエラでルクスの味方だ。
つまり、ここはとっとと退散するのが良いだろう。
俺はテオドールの襟首をひっつかみ、ズルズルと引きずりながら2人に声をかけた。
「時間もないからそろそろ戻る」
「うん。達者でね!」
昨日と合わせて1番の晴れやかな笑顔で手を振られた。
そんなあからさまに喜ぶなよ。
街に住んで人見知りも多少は解消されたのではと思っていたが、そんなことはなかったようだ。
ぶつくさ文句を言うテオドールを黙殺し、俺はそのまま家を出る。
「帰りの手段は用意してるのか?」
「……そんなの知らないもん」
拗ねてる場合じゃないだろ。
結局家に引き返し、ルクスのツテを使って馬車に乗せて貰えることになった。
……行きよりも断然心地良い移動だったとだけ言っておこう。
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