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自分がこんな超常現象を起こせることに気味の悪さを感じた時期もあったが、今ではすっかり身の一部。
突然現れた俺に警戒して身構える従者や驚く貴族を余所に、俺は指定された教室に入った。
去年までとは大違いな広い教室。
広々とした机にふかふかの椅子。
苦労するのはわかりきっているのに、死に物狂いでこの場所を目指す奴らの気持ちが少しわかった気がする。
事前に指定されていた通りに窓際の最後列に座る。
突き刺さる視線は無視をして、例の如く俺は机に突っ伏した。
しかし、その平穏は長く続かず。
嫌な気配を感じて顔をあげるのと、机が横に飛んでいくのがほぼ同時。
舌打ちしつつ飛んでった机と逆の方を見れば、俺を凄まじい顔で睨みつける男がいた。
どことなく見覚えがあるような、ないような。
俺の髪を白銀というならば、この男の髪は黒銀だ。金属を思わせる髪色。反対に瞳は森を連想するような深い緑。
……やっぱり、この色合いに覚えがある気がする。
「お前……なぜここにいる」
そして、当然のことながら向こうは俺のことを知っているらしかった。
「別に望んで来た訳じゃない」
知っている風を装いながら、頭の中をひっくり返す。
そうしている間に、もうひとり増えていた。
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