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「……でも言わなくても知ることは出来るってことだよな?」
正直、話したくない。
記憶を覗かれる方がマシだ。
そう思う俺の心情を知ってか知らずか、ユリハは微笑みを浮かべて言った。
『言葉にして初めてわかることもあるの。
それに……本人から直接聞いた方が面白いでしょう?』
そのために連れてきたんだもの。
と、言われてしまえば俺に選択肢はない。従わなければどうなるかわからない。
神だと名乗ってはいるが、それが安全だということには絶対にならないのだから。
……あいつらと一緒だ。
深くため息を吐いて、俺はなるべく簡潔に話し始めた。
「いつも通りに強制的に一緒に帰らされて、いつも通りにアイツが事件に首突っ込んだんだよ」
『ふぅん……アイツって?』
「清勇 榊。文武両道、更にイケメン。学内の女子はほとんど惚れてたんじゃないか?」
俺にとっては諸悪の根源。俺に降りかかった不幸は大抵アイツが絡んでた。
『へぇー……あの勇者、そんな名前だったのね』
「……今、勇者って言ったか?」
『あら?言ってなかったかしら?貴方が死んだ時、サカキ君消えたでしょう?』
「ああ」
そうだ。アイツが消えなければ、アイツがトラックに轢かれるはずだった。
それがアイツが消えたせいで俺の方まで突っ込んできたんだ。
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