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『あれ、他の世界に勇者として召喚されるためなの』
「他の世界」
『ええ。サカキ君は女の子助けるために自分がトラックに轢かれそうになった。
でも、勇者の素質がある人間って少ないのよね。死ぬと困るから世界が保護したって所かしら?』
「他の世界のためなんかに俺は……死んだのか?」
『全ての原因がそれではないわ。そもそも貴方があの場にいなければ良かったのだから』
「そんなこと……!」
そんなこと言われたって……そんなのは無理だ。
唇を噛み締める。
出来たらとっくにやっているに決まってる、そんなこと。
『確かに……貴方には無理だったかしら?
要領も良くないし、親に言うにはプライドが邪魔をする。女の子の集団に言い返すには理性が邪魔をする。
現状を打破する気概なんてないものね』
クスクスと笑いながら言うユリハにカッとして、殴ろうとした体はピクリとも動かなかった。
『落ち着きなさい?』
「……十分、落ち着いている」
お前のせいで動けないからな。
『そうは見えないけれど……まあいいわ』
そこで言葉を切ったユリハは、更に唇を吊り上げた。
『脇野 策。貴方、清勇 榊のことをどう思っているの?』
そんなこと。
「嫌いだ。憎んでいると言ってもいい」
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