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分かり切っていたであろう俺の言葉に、ユリハは鷹揚に頷いた。 そして、悪魔のような言葉を俺に囁く。 『あまりに不憫な貴方に機会をあげる。 記憶を持ったまま、転生させてあげるわ。勇者の召喚されそうな時から16年前の異世界に。 赤ちゃんからだから、色々大変だろうけど……勇者に勝る力をあげる』 アイツに勝る力。それは、甘い蜜のような言葉だった。 ……欲しい。今、俺が何よりも欲しいものだ。 何一つとしてアイツに叶わなかった俺でも、そんな力があったら…… 勝てるんじゃないか?アイツに。 そしたら……復讐、出来る。 今まで、アイツのせいで被った不幸を返すことが出来る。 「……行く、行かせてくれ。異世界に」 冷静な時ならもう少し考えたかもしれない。 でも、この時の俺にはユリハの言葉に逆らうことが出来なかった。 『そう言うと思った。じゃあ、早速行ってらっしゃい……異世界へ。 楽しい生活を送れることを、祈っているわ』 そんなユリハの声はもう耳には入ってこない。 ただ、奇跡的に得ることの出来た夢のようなチャンスに、俺はその場を去るまで笑みを浮かべていた。 『憎悪をどうにかするためにあの世界に行かせるためとはいえ……煽りすぎたかしら? いえ、そもそも……私に説得とか誘導を任せるのが間違ってるのよ。 ……後はあの子に任せましょう』 俺を見送ったユリハがそんなことを呟いていたことを知る由もなく。
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