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握りしめていた拳を開き、大きく息を吸って、深呼吸。
よし。
扉を確認してみる。
嫌な音がしたからもしかしたらと思ったが……平気そうだ。
直すまでもない。
後は……
一応、ルクスに連絡。こんな音したら気付くだろうとは思うけど。
それから。
ローグを締めよう。
残りの1人のことなんてすっかり頭から消えていて、俺は中へ入ろうとした。
「お前、ここの家の人とどういう関係なの?」
だから、腕を引っ張られてそんなことを言われたことに心底驚いた。
「どうでもいいだろう。そんなこと」
「どうでも良かったら聞くわけないじゃない。馬鹿なの?」
「どっちが馬鹿だ。罵倒されて答える奴がどこにいる」
「……この程度、罵倒に入らないし」
「そうか」
「だ、だから、さっさと答えなよ」
「後でな」
「あっ」
捕まえられていた腕を振り払い、店の中へ足を踏み入れる。
そこには……空中で手足を拘束されているローグがいた。
この場にシエラとルクスはいない。ということはきっと、精霊の仕業だろう。
そして、テオドールは捕まっていないということは。
「お前、ここの商品に触ったな?」
薄い笑みを浮かべてそう問えば、強面の顔を歪めて押し黙る。
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