茅夏の場合

5/7
109人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
あれこれ思いをめぐらすうちに、次第に茅夏の足取りが、遅くなっていく。 国道に出た時には、すっかりあたりが暗くなっていた。 茅夏の脇を、ライトをつけた車が幾つも追い越していく。 2つ先の信号を渡ってすぐの、小さなスーパーの脇に、ひとつバス停があったはずだ。もし、時間が合わないようなら、そのスーパーで時間を潰してればいい。 店のレジ袋を提げて、家路を急ぐ人と、茅夏は何度かすれ違った。 もう夕飯時だ。圭介はご飯どうするんだろ。全く料理の出来ない夫の顔が浮かんで、咄嗟にかき消した。 (「出て行け」て言ったのは圭介なんだから、私が彼を心配することないよね) バス停で時刻を確かめると、10分後にバスは来るようだ。 (微妙な時間だな) と、外から店内を覗きこんだ。 歩いていける距離にあるスーパーはここだけだから、品揃えがイマイチ、ちょっと値段も高い、と文句を言いながら、茅夏もよく利用している。 昨日もここで買い物をした。 結婚当初は、車もなかったから、休みの日には圭介ともよく来たものだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!