「優衣編」

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「あのさ……ちょっといいかな?」 放課後の教室。 帰り支度をしていると、背後から声が掛った。 振り返ると女生徒二人が立っている。 「えっと……俺?」 俺は辺りを見回し、呼ばれたのが自分かどうか確認した。 何しろ自慢じゃ無いが普段女子から声なぞ滅多に掛った事が無い。 ましてや目の前にいるのは俺が密かに想いを寄せている子だ。 その子がコクンと小さく頷く。 「ほらっ!しっかりしなよ!」 隣の子がその子の背中を軽く叩いた。 「う、うん」 頬を仄かに赤らめながら頷く。 「あ、あの……チョコとか甘い物は好きですか?」 「あ、ああ」 彼女の緊張がこっちにまで移った。 何でそんな事を聞く? 「本当?」 「あ、ああ」 「良かったぁ」 彼女は安堵の表情を浮かべると隣の子と教室を出ていく。 突然の一連の事に我を忘れる。 「あっ……お、おい、何なんだよ?」 俺は慌てて彼女達を呼び止めた。 が、二人は既に廊下に出ている。 隣にいた子が顔だけ出しニンマリしながら答えてくれた。 「明後日楽しみにしてなね?」 それだけ言うと廊下へと戻る。 「言っちゃ駄目なのにー!」 あの子の声が聞こえた。 明後日?明後日って……。 バレン……。 瞬間、顔が熱った。
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