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「はい、どうぞ。義理ですけど」
「ありがとう。でも言わせてもらうと、社員全員に配って回っているのを見て、本命と勘違い事はないと思う」
「にゃはは、そうですね」
軽口を叩き合いながら、後輩社員からチョコを受け取る。
今日はバレンタインデー。
お返しに期待しているのか、それとも義理チョコでカモフラージュして、本命を渡したい相手に自然に渡そうというもくろみがあったりするのか。邪推をしながら袋を机に置く。
そろそろ書類の置き場がなくなって来た。
「相変わらずモテるなぁ!」
「あたっ!」
隣の同僚に叩かれた背中をさする。
こいつからすれば、スキンシップみたいなものらしいけれど、結構痛いので、出来ればやめてほしい。
「義理ならお前ももらってるだろ」
「あのな……」
ガシッと両肩を掴まれる。当然だけど痛い。
「知り合いの男全員に気前よく配る奴もいることはいる。そいつらと、本命にだけやる奴らを外した女は、みんな義理ならあげてもいいと、義理もあげたくないのラインを持っているんだ。これ以上は言わせないでくれ。泣きたくなるから」
半泣きの同僚の机には、小さな袋が3つあるのみ。
深く突っ込むのは可愛そうだからやめておく。
「私の場合、変な勘違いをされなそうだから、安心して義理を渡せるってだけだと思うがな」
「俺が妄想過多だと!?完全ド義理以外のチョコをもらったら、期待するのが当然だろう!」
アホか。
「そんなんだからもらえないんだ」
「うるせー、乾物ブラコン野郎」
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