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「んあーっ、はぁ……ん?」
甘いほんのりとした匂いが鼻腔をくすぐり目が覚める、カーテンの隙間から光がキラキラと漏れているのを見て朝になったのだと気づく。
いつもと変わらぬ朝、なのだが、一ヶ月前辺りから続いていた匂いとは違う香りで目が覚めたと悠斗は思った。
悠斗はこの匂いはなんだろう?と考えたが、考えても嗅いだことのない匂いだと気づき、思考停止させた。
「んんーっ!」
薄暗い中、悠斗が上半身を起こし伸びをすると、背骨がぼきぼき鳴っているのが聞こえた。
(うん、今日はすごく目覚めが良い。)
いつも通り、カーテンを開け日の光を浴びながら着替えをする。
悠斗はぱぱっと着替えを済ませ、階段を降り、毎日欠かさず朝ごはんを作ってくれている可愛い妹の所へ行く。
「あっ、兄さん、おはようございます」
「おう、おはよう」
妹と軽い挨拶を交わす。毎日見るエプロン姿は今日もバッチリ決まっていると悠斗は思った。
「んぁ、おはよう~。」
「えっ!? 父さん!?」
既に椅子に座っている父に驚く悠斗。
それもそのはず、悠斗の父は起きるのが大の苦手で、地震が起きようが、爆音の目覚ましが鳴ろうが、ここ数年は一回も朝に起きてこなかったからだ。
驚きつつも悠斗は椅子に座る、テーブルには既に美味しそうな香りを放つ朝ご飯と弁当が置いてあり、妹は既に片付けをしていた。
「でも何で今日は父さん起きれたの?」
あの父が起きてきたのだ、悠斗が理由を知りたがると、妹が少し自慢気に言った。
「ふふふ、今日は自作で目覚めの良くなるアロマを作ってみたので、試してみたんですがどうでしたか?」
悠斗はなるほどと思った。
さっきの嗅いだことの無い匂いと、今日の目覚め良さ、父が起きてきたのは妹のおかげだったらしい。
「ああ通りで、すごく目覚めが良かったよ」
悠斗がそう言うと妹は照れ臭そうに笑う。
「これアロマ職人シリーズでのオリジナルだよね?いやー風の魔法ならもう僕を超えちゃったんじゃないかな?すごいじゃないか。」
父も嬉しそうに褒める、自分の娘の成長に感動しているようだ。
「お待たせしました、では朝ごはんにしましょう。」
「おう」
片付けを終わらせた妹が悠斗の隣に座る、うん、いつも通り。
「では、いただきますっ」
「いただきます」
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