なんとなく

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  チャイムが鳴って、5時間目が終わる。 ガヤガヤガヤガヤ、賑わう教室。 でも机に突っ伏した鈴木の背中だけは、時間が止まったみたいに動かない。 本当に、マイペースなヤツ。 今日は6時間目がなくて、帰りのSHRが終わると、すぐにやってきた放課後。 鈴木はのんびり立ち上がって、カバンを肩に提げて教室を出て行った。 ……。 なんとなく、だけど。 あいつが、何かにぶつかった時は。 なんとなくだけど。 助けられるのは、俺のような気がする。 そんな。 何の根拠もない、タイミングすら謎で仕方ない曖昧な予感が。 ストンと、舞い降りて来た。 俺はまだ机に広げたままのプリントに、高校の名前を書きこんだ。 それをそのままカバンに突っ込んで、慌てて抱えて席を立った。 走って教室を出て、鈴木の背中を探した。 階段で発見して、上から叫んだ。 「鈴木っ!」 「……あー? なんだよ佐藤」 「俺、志望校、南校!」 「……」 階下から見上げる鈴木の目は、純粋に不思議そうな色合いで。 それから、フッと緩んだ口元と共に、今度は穏やかな色がのる。 「じゃー、俺も南にするわ」 「マジで?」 「マジで」 頷きながら、既に遠ざかって行く背中を。 俺は、なんとなく目が離せずに、ずっと見送っていた。 【完】  
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