プロローグ

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 天気予報が外れて夕方から降り出した雨は、街を灰色に染め上げていた。 濡れた路面に車が赤いテールランプを反射させ、列を成している。  家を飛び出して入った喫茶店の窓から見える景色は、私の今の気持ちとやけに同調していて、その色調が余計に暗いものに見えてくる。 落ちてくる雨。 流れていく――私の眼からは、何も流れないのに。 泣いてしまえば楽になれるのか……。 自分がどうしたいかも分からないまま、注文したコーヒーを傾ける。  どれくらい時間が経ったのだろう。 店内の人は来た時よりも疎らになり、少しずつではあるが、雨足も弱まってきている。 ただ、一向に立ち上がる気にはなれない。 ――もう少し、このままで。 冷め切ってしまったコーヒーを再度傾け、窓の外を呆然と眺めた。
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