Ivory

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 そのうちに南希が息を切らしながら事務所に入ってきて――いつも通りの顔ぶれが揃う。 ただ一つ、いつもと違ったのは息を切らしながら入ってきたのは南希だけじゃなく、もう一人居たってところ。 「今日くらいは早めに来ようと思ったんだけどね……やっぱり自転車が良いかしら?」  息も絶え絶えながらも、口元に笑みを浮かべるその人は蘇芳撫子(すおう・なでしこ)――社長の奥様。 徒歩で幼稚園に子供を送り、その足で此処に来たらしい。 腰まで伸びていそうな黒く長い髪を後ろで一つに纏め、ふわりとしたロングスカートによく似合うブラウス。 きっと社長が猛アタックしたに違いない、と思わせる程に笑顔の眩しい美人。 「奥様、自転車は乗れないんじゃ――」
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