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息を切らして事務所に入ってきたのに、飲み物も出せないまま始まっちゃうし。
「何か飲みますか?」
と、ミーティングが終わってから奥様に声を掛けた。
「大丈夫。こんな事になっても平気なように、持って来たの」
声を弾ませ出したのは、小ぶりのタンブラー。
「奥様のカップも用意してありますから、コーヒーやお茶が飲みたい時は仰ってくださいね」
「そんなに気遣わなくて良いのよ。それに”奥様”はちょっと――やっぱり変かな?」
照れ臭そうに俯きながら。実際に社長の奥様だし、何も違和感は無いんだけど――。
「じ……じゃあ『撫子さん』って、呼んでも良いですか?」
あまりに可愛かったから、釣られて私まで恥ずかしくなってくる。
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